忍者ブログ

ANOUK Watch & Jewelry アンティーク・ヴィンテージのジュエリーと時計、その他趣味のブログです。

RSS TWITTER RssTwitter

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

アーツ・アンド・クラフツ



19世紀後半の産業革命に対抗する形で始まった、1880年から1920年にほぼ米国と英国を席巻したアーツ・アンド・クラフツ運動についてご存知の方も多いと思います。思想家、詩人、アーティスト、デザイナーにより引き起こされた産業革命に反発するこのムーブメントは、クラフトマンシップの重要さを認識し、ハンドメイド作品の美しさを取り戻す、自然からインスパイアされたシンプルなデザインメソッドを目指したものです。

イギリスの美術評論家ジョン・ラスキンは、実際には数十年も先にムーブメントについて考えています。彼は当時のビクトリア朝デザインの退廃を思慮し、職人の幸せを考え、労働条件の改善を主張しました。パターン設計者ウィリアム・モリスは、1861年にモリス・マーシャル・フォークナー・アンド・カンパニーを設立したときに、実際にラスキンのセオリーに基づいた運営をしています。



さらにロンドンのイーストエンドのスラム街で、チャールズ・ロバート・ジアシュビーは、美術工芸の理想を貫くために1888年に手工芸職人ギルドを設立しました。その目標は、公正な賃金、良好な労働条件と協力的な雰囲気の中で、家具、金属製品や宝石類を製造することでした。当時の産業革命下、労働者は低賃金、長時間労働に苦しめられ、手の込んだ手工芸品や職人の技を生かした素晴らしい作品よりも、効率重視の大量生産に重きを置かれていました。イギリスは産業革命により大きな富がもたらされた半面、アート、手工芸、職人軽視の末の技術退廃という危機に直面していたのです。



当時のほとんどの英国のアーティストがそこまでこのムーブメントの社会的側面を重視することはありませんでした。しかしその代わりに、彼らアーティスト、職人達は自分自身が満足する家具、陶磁器、金属細工、宝石といった様々なプロダクトを作り出し、1888年にアーツ・アンド・クラフツをこのムーブメントの正式名称としたのです。

産業革命以降現在に至るまで、工場での大量生産製品は安価で一定した品質を保つという素晴らしい恩恵を私たちにもたらしたことは事実ですが、それに伴い失われる美しい伝統工芸や職人技術があります。働き方やライフスタイルにも言及した100年以上前のこの運動が、私たちに教えてくれるものはたいへん大きいといえます。

PR
Clear